動脈瘤の顛末

 2年前、TKD医学部付属病院で、ちょっとした手術を受けるので全身の血管を調べた。そのときに腹部に動脈瘤(どうみゃくりゅう)が発見されたが、まだ心配する状態に至っていないと知らされていた。
 心配な状態とは、動脈瘤破裂のことだ。

(倒れる前)
 我が家の隣地(畑。今は空き地)の地主が今月8日に境界確認をしてもらいたいと言ってきた。当日は、隣接地の地主7人ばかりが集まった。

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 この土地の境界は100年以上前に定めたものだ。その時代の田畑の境界はいい加減な目印で曖昧なものが多いが、ここは元の地主が寺院(昭和22年の農地解放で所有権が小作人に移った)であり、周囲が商家だったため境石が埋められ、比較的はっきりしていた。

 境界確認の立会いが済み、帰宅する際、境の石垣を跳び越えた。
 跳び越えたつもりだったが、思うほど足があがっていなかった。その場で倒れたが、少し腹を打ち、多少の擦り傷ができたくらいだった。だが、このとき腹部大動脈瘤が損傷を受けたらしい。

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(倒れた日)
 翌々日の朝、午前6時ごろ、風呂に入ったとき平衡感覚がおかしい。湯船の中で真っ直ぐ立っていられなくなった。

 その後、布団に横になった。そして記憶がない。

 午後1時ごろ、ドタッという音を2階で聞いた妻と長女が階下のトイレで倒れている私を見つけた。顔色、顔つきに驚き救急車を呼んだ。
 救急車の中でも市立病院の救急措置室でも意識回復など蘇生を行ったらしい。普段160/90の血圧が測定不能に下がっていた。点滴の袋が4つ5つ吊り下げられ、すべての管が私につながっていた。
 少しとぎれとぎれに意識が回復してきた。部分的に医師の会話が聞こえていた。エコーで腹を調べていた医師。
「内臓が水浸しみたいだ」
「腹水がたまっているのか」
 倒れた様子や動脈瘤のことを妻から聞いた医師が
「CT準備しろ」
「造影剤が弱っている腎臓にダメージを与えます」
「家族に同意確認しろ」
 薄れたり、はっきりしたり不安定な意識の中で、私は思わず
「CT使ってくれ」
と叫び、再び意識を失った。妻はこのとき何種類もの同意書の署名押印に大わらわだったそうだ。

 CT検査で腹部動脈瘤が破裂してることが分かり、市立病院では対応できないのでTKD付属病院へドクターヘリと緊急手術の要請を行った。

 この日TDKは足柄上郡から緊急患者が相次いで受け入れ不可能。 ドクターヘリはまわすがTDKで探す別の医療機関へ行ってほしいとのこと。

 市立病院ではヘリ到着に合わせ、酒匂川右岸のヘリ到着地へ準備を進めた。受入病院は湘南鎌倉総合病院に決まった。
 結局、ヘリ到着は午後4時くらいになった。

 ヘリに搬入されるときに意識が戻った。小田原市立病院からTDKのドクターヘリ医師に患者と救急診断データの受け渡しが行われ、離陸。TDKから、以前の私の受診記録データが湘南鎌倉へ送られた。


 ドクターヘリは夜間飛行を行わないから日没前に搬送先のヘリポートに着かなければならない。あと30分遅かったら陸路、救急車で運ぶことになったらしい。その場合、私は助からなかった可能性が高かったと、後に市立病院の医師から聞かされた。

 付き添い家族は乗れないので私ひとり。飛行時間は15分くらいか、湘南鎌倉総合病院の屋上ヘリポートに着くと、待ちかまえていた麻酔医が直ちに全身麻酔。そのまま意識を失った。

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 手術が終わり、気が付いたのは集中治療室。手術後、痛み・苦痛はまったくない。腕の良い医師だったのだろう。

 両足の付け根からカテーテルを挿入し、動脈瘤を切除して人工血管に置き換え、また血管の細くなっている部分をステントグラフトで補強する手術を行った。

 3日間、集中治療室にいて、3日間一般病室で過ごして退院した。一般病室に移ってからすぐに歩行のリハビリが始まった。

 集中治療室担当の看護師は何ことにも過不足無くテキパキとして申し分がなかったが、一般病棟の看護師はそれほどでもなかった。

 入院した感想(?)  TDKと違って病室でネットが使えない。

 退院する前、医師から治療の内容につき、説明を受けた。市立病院でも湘南鎌倉でも蘇生に力を尽くしていただいたようだ。今回はじめて感じたことを話してみた。

「あっちの世界を覗きましたか」
 医師は表情を変えずに応じた。

 実は極めて自然に、あっちの世界に移った気がしていたのだ。三途の川が見えたわけじゃなし、丹波哲郎の『大霊界』みたいなお花畑もなかったが、そんな気がするのだ。

 施術後、尿と液状の便が不規則に突然出るので紙オムツが離せなくなったが、それも今では必要なくなった。

 ついでに、妻が随分と気にしていたドクターヘリの経費は、ヘリ使用料はなし、ヘリの中でTDKの医師が行った治療についてのみ請求がきた。


追記
 もともと弱っていた腎臓に造影剤を使うとダメージを受けて人工透析が不可避と聞かされていたが、幸いにも現時点では透析の必要はないとされた。

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この記事へのコメント

孟子
2013年02月24日 08:45
病院で動脈瘤オペ待ちの人が、沢山いました。
まさか、打撲で破裂するとは思いませんでした。
オペ待ち患者が、1ヶ月も待機入院している訳が分かりました。

意識が無くなるまで、意識があればいいのですが、
不思議に、全然覚えてませんね。
冬のトイレと浴室は危ないそうですが。

あっちの世界を感じ取れて、貴重な体験でしたね。
危機ホルモンが出た、と云うことですよね。
私は心臓バイパスで、人工心肺を使ったのですが、
眠りこけていたようで、何も覚えていません、それが心残りです。
ドクターヘリも傍で見たことはありますが、乗ったことはありません。

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